少し休憩しようか、といつものコメダ珈琲に入る。
私がコメダ珈琲に入るのは、休憩するときか、働く時のどちらかである。
行動が違える時に空間は分けた方がいいとどこかで聞いたことはあるが、どちらもこなしてしまうコメダ珈琲を私は愛している。
寒い店の外に比べて、ずいぶんと暖房の効いたショッピングモール。
厚着してきた体はたちまちカッカッと熱くなっていた。
最近は運動が疎かになっているから、そのせいもあるかもしれない。
とてもホットコーヒーを頼む気分ではなかったし、アイスコーヒーというのも味気ないので、しげしげとメニューを見やる。
こういう時は大体コーヒーシェイクを頼むのだが、今日は変化球を狙ってみるのもいいかもしれない。
そんな時にふと、目に入ったデザートの欄。
飲み物ではなく、デザートだ。
そこに見慣れぬ文字、「飲むクロネージュ」。
クロネージュは確か、ココア生地のバームクーヘンの上にソフトクリームを乗せたコメダのデザートだったような。
それが、どうやら飲み物になっているらしい。
そもそもクロネージュからして食べたことは無かったが、この際飲み物から入ってみるのもいいかもしれない。決定だ。
忙しない店内、呼び鈴を押して数分でのむクロネージュは運ばれてきた。
見た目は普通のシェイクと変わらない。
勝手なイメージはスタバのフラペチーノ。
きっとベースのシェイクにクロネージュっぽいアクセントが入っているんだろう。
多分、飲み物に近い形で。
そんなことを考えつつ、太いストローで一口吸ってみる。
すると、びっくり。
口の中に入ってきたのは冷たいソフトクリームをふんだんに吸った、ケーキ生地だった。がっつりケーキ生地である。
目を見開き、続けざまにもう一口。
しかし、吸っても吸っても口に入ってくるのは飲み物を纏わせたケーキ生地だ。
あ、確かにこれは、飲み物じゃなくてデザートだ。
謎に確信しつつ、私はまた冷たいケーキを飲み続ける。
少し侮っていたらしい。なんの語弊もなく、これは飲むクロネージュである。
歩き続けて疲れた体に糖分と冷たさがしみ渡る。
やはり甘い物は元気をくれる。脳と体、どちらの疲れにも糖分は無敵だ。
ついでにサービスの、しょっぱい豆菓子を食べる。
このコメダの豆で喜ばない人はいないだろうと勝手に思っていたのだが、対面に座る同居人はそうでもないらしい。
ここにきて同居人が豆菓子を食べている姿を、私は見たことがない。
デザートを飲み終わり、豆菓子も食べ終わったタイミングで、同居人が行こうか、と私に声をかけた。
小皿に残った一袋の豆菓子。
酷く惜しい気持ちになりながらも、周りの目を気にして置き去りに、私たちは店を後にしたのだった。