23回目の誕生日を迎えた。
正直20歳を超えたあたりからあまり実感はなくなってくる。
今年なんて誕生日イコール4月の足音に聞こえてしまって、むしろ気持ちが塞ぐ一方だった。
元同居人がケーキ屋の場所を調べてくれていたようで、人の多いデパ地下でケーキを買う。
タルトの店だろうか。名前もわからなかったが、ショーケースに並ぶケーキも、その上で並んで微笑むお姉さん達も、何もかも上品で高そうだった。
そんな中選んだ、一切れのケーキ。
旬なのか、ベリー系のケーキが多かったので、その中から木苺のティラミスを選んだ。
そういえば、去年の誕生日にはケーキが無かった。
最近元同居人に恨みばっかり残っているんじゃないの?と尋ねられたが、まぁ半分は当たっていると思う。
とはいえ、こんなブログを書くほどの私。
誕生日にケーキを忘れられるのは結構屈辱だし悲しいことだった。
よっぽど一人でホールケーキを買った方が幸せだと思ったくらいだ。
そんな反省もあってか、今回はちゃんと覚えてくれていたらしい。
家に帰って、コンビニで買ったコーヒーと共に頂く。
せっかくだからお皿を出せばよかったのだろうが、この日は一日歩き回って疲れたから、そこのところは目を瞑ってほしい。
層になっている断面が綺麗な、かわいいケーキだ。
ついてきたプラスチックのスプーンを使って、一口。
ざり、とした食感。
木の実が潰れて、酸っぱい美味しさがじゅわりとしみてくる。
あっさりとしたクリームに、ほろほろとしたタルト生地。
全部が合わさって、美味しい味を奏でている。
小さい頃は誕生日に母がケーキを作ってくれていた。
ホールのチョコケーキだったり、ショートケーキだったり、スポンジから焼いてくれた記憶がある。
段々と年を重ねるにつれ、誕生日の扱いもケーキの扱いも疎かになって、平日との区別はあまりつかなくなってしまう。
何となくそれは悲しくて、でも自然なことであるような気もしていて。
誕生日。
年を重ねることが嬉しくなくなったって、誰からも祝われなくなったって。
私にとってはいくつになっても特別な日であってほしいのだけれど。
タルトの耳、サクサクの部分までしっかりと食べ切ってしまう。
これで私の誕生日はきっと終わりだ。
あとは苦いコーヒーを飲んで、眠るだけなのだ。
ちょっとだけ吐出した、けれど来年には忘れてしまいそうな、そんな些細な一日。
でも、来年になっても、せめてこのケーキだけは覚えておきたいと思った。
ハッピーバースデー。