食べ物と私

食べます。

プライド、お高いクリームソーダ

その友達に会ったのは夏の終わりぶりだった。

 

綺麗なストレートの髪を肩より少し長いあたりで切り揃えて、白い肌の彼女はそこに立っていた。

 

都会の喧騒の中。ふらふらと街を行く。

目的のものをすぐ食べにいく予定だったのだが、友人iがのちに合流するとのことなので、少し暇を持て余す。

 

適当なレジャーショップに入りつつ、近況を聞いていく。

私は特に大きく変わったことはなかったが、彼女の変化は大きかったようで、新しい姿が多く見えてきた。

 

その様子に喜んだり共感したりしつつ、どこかに入ろうという話になった。

都合よく近くにあった喫茶店

「とりあえず」入るにしては豪華すぎる、情報に疎い私でも聞いたことがあるような有名なお店だった。

 

彼女とは大学からの付き合いだった。

出会うのが二十歳前後の歳で良かったと思う。

大学以前に出会っていたら、絶対に関わっていなかったであろう人だから。

 

私から見て、彼女は酷く強い半面、それに負けないくらい脆かった。

何も捨てきれず、認められず、かと言って自分の声を全て無視できるわけでもなくて、コントロールが効かない。

自分が自分でいるための能力に優れていて、どこか生きづらそうな人。

 

いわゆる、同じ穴の狢だ。

 

薄暗い店内で名物のものではなくて、お腹を満たすためのものを頼む。

店員さんは注文を暗記して作り始めるようで、私には到底無理だと感じた。

 

どこか厳かな空間。

クリームソーダの色はオレンジ。モンブランはチーズといちご。

 

f:id:zenryoku_shohi:20220304213344j:image

 

可愛いフォルムのクリームソーダ

一口吸うと、シュワシュワと爽やかなサイダーが喉を通る。なんだかひどく繊細な味がした。

ケーキは思ったより軽く、いちごが効いている。

 

ゆっくりと食べ進めつつ、歩きながらでは話せなかった、起こったことを話していく。

 

半年間、色々なことがあったが、何だか私はどこにもいないように感じた。

きっと私も本質的には彼女と同じなのだろう。

 

だけど、私は激情に耐えられない。

自滅を繰り返すことに疲れてしまった。

だから考えないようにする術を身につけた。

出来るだけ己を殺せるように、出来るだけ誰にも呆れられないように。

 

それが良かったことかどうかは、全く分からないけれど。

 

失敗でさえもそうとせず、意気揚々と語るしかない彼女。

彼女が一番傷つくことだと分かっていながら、少しだけ同情の色を混ぜて、向かい合わせの彼女を見る。

 

自尊心や自己愛。

そんな沈下な言葉にがんじがらめになりながら、プライドのことを格好いいと、私はまだ思えずにいる。