昨日の楽しい時間が終わり、頑張らなければいけない朝。
今日は午前中にちょっと嫌な予定が入っているのだ。
冷蔵庫に眠らせていた、茶色のごつごつを手に取る。
冷蔵庫……に入れておくことは、もしかしたらあまり好ましいことではないのかもしれない。
けれど食べごろに時間がかかることに甘え棚の上で腐らせてしまった前科がある私は、いつもアボカドを冷蔵庫にしまう。
結果、最近は少し待てなかったアボカドばかりを食べているような気もするのだが。
私の中でアボカドはご褒美感が強い。
単体で味はない(と私は思っている)のに、どうしてだろうか。
サンドイッチ、ハンバーガー、パスタ、サラダ。
あらゆる料理にアボカドが添えられているだけで心が躍る。アボカドが決め手となって注文してしまうこともしばしばある。
いつかのブームでいきなり現れたような気もするし、野菜かなんなのかも分からない。
見た目も味もなんだかおもちゃみたいに可笑しなやつだが、とにかく美味しくて、嬉しいのだ、アボカドは。
だから、少し重い朝。私はこのアボカドを贅沢に潰す。
パンを焼いている間に、アボカドの中身をボウルにくり抜く。
やっぱりちょっと待てなくて、食べられない程ではないにしろ今回もまだ少し固い。
けれど、駄目だ。他でもない今日、私は元気をもらう必要があるのだから。
スプーンと、援軍のフォークでアボカドを潰しつつ、マヨネーズ、胡椒、マスタード、レモン汁を適当にぶち込む。ちなみに今回の胡椒はあらびきだ。ただの気まぐれ。
何にでも染まってしまうアボカドのクリーミーさは、マヨネーズが入ることでたちまちこってりとした味に変貌してしまう。
その染まりやすさが、今日の私を助けてくれる。
あとはこんがり焼けたトーストに、この緑色のペーストを塗るだけである。
今日は重さで言えば5キロくらいの憂鬱さだ。
もしこれが10キロだったり50キロだったりする時は、スライスチーズをパンにのっけて焼いたり、クリームチーズをアボカドに混ぜたり、目玉焼きを乗っけたりする。
全部のせはまだやったことがない。そんなことになる朝が来ないことを祈るばかりだ。
そんなこんなでアボカドトーストの出来上がり。
冷蔵庫に眠っていたセブンのカフェラテのおかげで、さらに特別感が増す。
アボカドを知らない人が見たらさぞ恐ろしいだろう、不味そうな色のトースト。
その美味しさを知っている私は大胆にかぶりつく。
固かったことを忘れてしまうくらいになめらかなアボカド。
私の口内を束の間の幸せで満たした後、ゆっくりと胃に入る。
美味しい。美味しい。
うーん。頑張れそう。……多分。
そんな風にご飯と会話しながら、目の前の窓から覗く曇り空に思いを馳せるのだった。
追記
ちなみにこの日の予定は延期になった。
まあいい。恨みがましく、またアボカドを潰すまでである。