目覚ましが鳴り切ってしまい、力なくベッドに身を預けた。
今日も今日とてやらなければならないことは多いのだが、どうにも体が重い。
二日連続朝から晩まで用事があった。頭はともかく、体が疲れているような気がする。
とりあえず何か食べようにも、全部が億劫だった。
しばらくそのままブルーライトを浴びてみるも、いよいよ動かなければならない時間になり、私はのそりと戸棚を開けた。生憎食パンを切らせていたのだ。
奥底に隠れている缶詰たちを引っ張り出し、缶入りのパンを手にする。
乾パンではない。缶入りのパンだ。いわゆる非常食。
災害セットのためにわざわざ買ったわけではない。
大学の卒業記念品に紛れていたのだ。
本当に何で卒業の記念にこれが配られたのか分からない。
他にも防災セットを貰ったような気がするのだが、どこの大学でも配られるものなのだろうか。
ちなみに一緒に閉まっていたらしいレトルトカレーの賞味期限には半年前の日付が記されていた。やめといた方がいいだろうか。
災害時というわけではないが、今日の機動力が必要だ。そして好奇心もあった。
実は缶に入った非常食のパンが発売される、と、かなり前にテレビで見てから密かに気になってはいたのだ。
プルタブを持ち上げ、開けてみる。
中からはカップケーキのような、可愛らしいフォルムのパンが出てきた。
肉まんよろしく、巻かれている紙がめちゃくちゃに取りにくい。
しかしそれは、それだけパンがふわふわしている証拠で。
案の定千切って一口食べてみれば、紛れもなくパンだった。
ちょっと硬いのかな、なんて思っていたが、そんなこともない。食感は6個入りで入っているロールパンに似ている。
レーズンについては、そんな風味は感じられたが、入ってたドライフルーツはよく見るあのレーズンではなく、どちらかというと透明感のある南国系のドライフルーツの見た目をしていた。なんにせよ、美味しい。
そしてさすが非常食といったところだろうか、二個入りで結構お腹いっぱいになってしまった。
紙と一体化したパンも出来る限り食べつくし、一息つく。
味に関しては普通のパンで、可もなく不可もなく、といった感じだが、とりあえず疲れた体のエネルギーにはなった。
それでも何となく気乗りしないまま、くしゃみを一つ。
そういえばこの前、掃除機をかけるタイミングを逃してしまったのだった。心なしか空気が悪いような気がする。
やらなければいけないこと、やりたいこと、こなさなければならないこと。
掃除はそのどれでもないが、単純作業で体を慣らすのも一つの手かもしれない。
これを書き終えたら、とりあえず窓を開けに行こうと思う。