冷蔵庫にあるキャベツを消費したい。
買ってきたもやしやキノコ、にんじんをキッチンで切りながら、すっかり元気のなくなったキャベツを見やる。
これは一週間ほど前に買ったものだ。
妹が来る兼ね合いで、長い間放置することになってしまった。
生で食べるのはきっと美味しくないから、今日は大人しく他の食材と鍋である。
鍋は正直、一人暮らしにとってありがたいのかそうでないのか分からない。
安く済む、というが、全然そんなことはない。
入れる食材にもよるが、一から揃えようとすると結構値が張る。なんたって主役の野菜は高いのだ。
安く済むのはきっと家族がいるひと達に限られるのだろう。
でも、楽なことは楽だ。
恐らく包丁を使う料理の中で、一番楽なのではないだろうか。
それに、寒がりの私を優しく温めてくれる。
小さい頃はなんだか味気ない感じがして、鍋が嫌いだった。
その時のことが申し訳なくなる程、大人になった今、私は鍋に年がら年中お世話になっている。
野菜を切って、鍋キューブとキムチでくつくつ煮込んでいる間に、鶏ミンチを取り出す。
そこにみじん切りした玉ねぎ、片栗粉、鶏がらスープの素、塩コショウを入れて適当に混ぜる。
このまま一口サイズにすくってスープに入れれば、簡単肉団子だ。
ただ、ちょっと塩梅を間違えた。
何個か入れたところで鍋がギリギリ、溢れそうになって、一旦肉団子の投入を辞める。
これが出来上がってから、残りは入れるとしよう。
ということで、第一弾。
少しキムチをケチったか、赤みが足りないような気もする。
まあ、全ての調節は第二弾でやればいい。
溢れないように器によそい、とりあえず出来上がったばかりの肉団子を一口。
余計な油っけもなく、ぎゅっと凝縮した肉が口内を満たす。
凄い満足感だ。ちょっと喉が詰まりそうになって、スープを飲む。
ほのかにキムチが香る、優しい味だ。
第二弾、肉団子を全て入れ終えた後に、冷蔵庫にあったビールを取り出す。
汁物に酒を合わせることに抵抗を感じる人もいるらしいが、私は基本、食べているものが何であろうと飲める。
小学校のうちはご飯と牛乳を合わせられていたのだ。酒とスープくらい楽勝だった。
それに、私はむしろ鍋を食べている時にビールが欲しくなってしまう。
単純に、冬場のビールは寒いのだ。
あの冷たさが心地よく感じる瞬間と言えば、風呂上りか鍋を食べている時に限られる。
熱い口内に、三分の一ほど一気にビールを流し込む。
ほどよいアルコール。ほどよい苦さ。
酔っぱらうにはまだ遠いが、少し気分は楽しくなる。
寒い夜。暖かい私と、冷たいビール。
束の間のこの至福を、壊さないようにそっと味わうのだった。