久しぶり急かされる事なく目を覚ます。
優しい朝。そのままであればよかったのだが、ラインの通知を見て一気に心が曇る。
一転、罪悪感の朝だ。
寒さに抗えず、布団の中でぽつぽつと文字を打つ。
ごめんなさい、と精一杯の謝罪だ。
絵面だけ見れば面白いくらいに説得力がない。
事の発端は昨日。
簡潔にいえば、明日、つまり今日の用事を代わって欲しいと言われたのだ。
そして私は相手に借りがあり、皮肉にも今日は何もない日だった。
それでも私はごめんなさい、と。
今日に至っても代理が見つからずに困っているであろう彼に対し、布団の中から用事が入ったなどとのたまわっているのだ。
とりあえず起き出して、いつも通りフライパンを温める。
残り少なくなったハムの封を切る。卵も用意してしまおう。
言い訳だが、代わりたい気持ちが無かったわけではないのだ。というかむしろ代わってあげたかった。
ただ、明日。
私にとって明日は処刑台に立つような目に遭わなければならない日なのだ。比喩ではなく!
そのために今日は備えておきたい。
少しでも体を休めたいとそう思っただけの話なのだ。
とは言え、前回私はそんな彼に用事を代わってもらっている。
ああ、もう本当に申し訳ない。こんな私で。
焼けたトーストに卵とハムを乗っける。
本当はこんなことをしている場合ではない、いつもの朝食。いつもの朝だ。
さくり、と音を立ててパンが口に入ってくる。
偏った黄身とのバランスが難しい。
もちろん、私が絶対に代理になければいけない理由もなければ、罪悪感を抱く必要もないはずだ。
自分のペースを守ること、無理をしないこと。
これまでだって、何度もこの決意を私は結んできた。
その度に守れたり、流されてしまったり。
安心安全、平和で普通の社会の中、色々なことに翻弄されては諦めてきたけれど、私が私を守るんだということは、特にこの夏、強く決意したことで。
だから何も間違ってはいないはずなのだ。
自分勝手だとしても、きっと私は壊れやすいから。
昨日のこと、今日起こっているであろうこと、明日のこと。
全てが憂鬱に思えてしまう。いっそ眠ってしまおうか。
それでも時間は過ぎ、私はまた動けずにいる。
どれもこれも明日が身を結べば万々歳ということにしたいのだけれど。
最近買ったスティックのカフェラテを飲みつつ、ため息をつく。
どうにも最近疲れている。私ではなく、きっと周りが。
みんながみんな、自分を守りきれればいいのにな、とそんな我儘なことを思ってみる。
誰かから怒られてしまいそうだ。
重い腰を上げる。スマホの通知に、もう一度謝った。