まだ少し眠気が残っていた。
休日にも関わらず、化粧をして、パソコンをいじりながら待機。
そのまま時間になり、私は同居人と一緒に街へ繰り出した。
数日前、あんな話をしておきながら、今日は二人で出かけていた。
空は曇っていた。手袋越しに手を繋ぐ。
楽しいことは好きだった。自分本位であったとしても、もう私はそれで良かった。
まずは古くなった筆箱を買い換える。
考えてみれば五年以上使っている筆箱だ。そろそろ寿命だった。
重視すべきは可愛い柄である。
ちなみに今使っている筆箱には三匹の猫がキャットフードのゴミをかぶりドレスアップしている姿が描かれている。
結局、そう迷うことなく、表に魚、裏に缶詰めと、加工前後の姿が描かれた哀愁漂う筆箱をカゴに入れた。
可愛いの基準は人それぞれである。
それから二、三、買い物をして、お腹が空いたと呟いてみる。
ここまで一銭も使っていなかった同居人も、それに同意した。
クレープを食べたいといういつもの思いつきから、同居人がカフェを調べてくれていた。
しかし、店の前まで来たところで、定休日か何かであいにく店が閉まっていることに気づき、私達は踵を返した。
その店のウェブサイトを詳しく調べ、定休日を確認しようとする同居人に、クレープなんてどこでも売ってるよ、と、元も子もない発言を溢す。
調べてくれていたのはそれなりに有難いが、クレープは食べ歩きと、数億年前から決まっているのだ。
そんなこんなで適当に歩いていれば、本当に適当なクレープ屋さんに遭遇する。
番号が振られるほどずらりと並んだ、なんの変哲もないメニュー。
腹の虫も鳴っていることだ。
しっかり吟味して、それでもいつもよりは早めにメニューを決める。
筆箱のおかげか、はたまた目の前の甘い匂いのおかげか。
機嫌が良かった私は、おそらく全てのお店において人生初、トッピングまで頼んでしまった。
そして待つこと、数分。
クッキーアンドチョコのクレープに、いちごのトッピング。
見るからにクレープ。見るからにあまそうだ。
嬉しくなって、一口。
ほろほろした少し苦いクレープに、チョコチップがよく合っている。
そして酸味の効いたいちご、何より、薄い生地に対する、この大量の生クリーム。
実際にクッキーとチョコは上だけで、ほぼ八割を生クリームが占めていた。
そう。これこそが、私の求めていたクレープだ。
どうにか上手く食べようと頑張りつつも、生クリームを堪能する。
トッピングしたいちごは、クレープの下の方まで続いていて、なんだか嬉しかった。
お目当てのものが全て済んで、ご機嫌な帰路。
とはいえ、同居人の目はあまり見ることができなかった。口だけが動いていく。
何をどう感じているのか、全く分からない。
分からないけど、楽しまなきゃ損なのにな、と。
ひどく他人事のように、私はそう思った。