食べ物と私

食べます。

雪とスタバ

「今日は雪だけど大丈夫?」

 

そんな天気予報と化した母のラインを確認しつつ、眠気まなこでカーテンを開ける。そして、仰天。

 

ふわふわの白、白、白。

屋根どころか電線にまで。

ここ数年見ないくらいには雪が積もっていた。

 

朝に用事のある私は呆然として外を見る。もはや若干引いていた。

しかも雪はまだ降り続いている。それも、結構なボタン雪が。

 

仕方なしに年甲斐もなく、ポンポンのついたニット帽を被り、外に出る。

アスファルトはそうでもないかと思ったが、とんでもない。車の通った跡はじゃりじゃりと、危なっかしく汚れた雪が固まっている。

 

転ばないよう、慎重に歩みを進めつつ、高校の頃、雪が積もった朝を思い出す。

 

今も昔も、私の住む地域で雪が積もることはそこそこ稀なのだが、その日も今日と同じくらい、雪が積もっていた。

そして運の悪いことに、その日は登校日で、家の車はスタッドレスに交換していなかった。

 

自転車では当然無理で、駅まで片道一時間弱の道を雪の中、歩いて行くことになったのだ。

まぁまぁの絶望感だったことを覚えている。

 

あの時は何度か滑りかけたが、今日はあの頃と違って革靴ではなくスニーカーだったからか、上手く目的地まで辿り着けた。

 

用事を済ませ、決めていた店に入る。

朝食はまだ食べていなかった。今日は目的地の近くにあった、スターバックスで食べようと決めていたのだ。

 

この雪の中、フラペチーノはさすがに憚られたため、季節限定のホットのドリンクと美味しそうなラップを注文する。

生チョコ味の甘い飲み物だから、食べ物はしょっぱいものが良かったのだ。

 

f:id:zenryoku_shohi:20220121215254j:image

 

足場の悪い中、普段は人がいっぱいのここも今日は空いていた。

一人席。少し高い椅子に腰掛け、そっとマスクを外す。

 

まずはラップから。

名前の通り、アボカドの味が強い。プリプリとしたエビの食感も感じられるし、その他にも野菜がぎっしり詰まっていた。……何の野菜かは、ちょっと分からなかったけれど。

美味しいことだけが確かだった。

 

合間に本命のドリンクに口をつける。

生クリームと牛乳、そして優しく溶けたチョコレートの味が口内に広がる。ほっとするような、朝というよりは夜に飲みたい味かもしれない。

 

店内のガラス窓から外を見る。

人々が行き交う中、雪はまだしんしんと降り続いていた。

 

やれ雪だるまや雪合戦とはしゃいでいたあの頃は既に遠く、それでも雪は積もっていく。

何だか少し寂しいような、置いて行かれているような気持ちだ。

 

でも実際は、私が雪を追い抜いていってしまったのだろう。

 

ドリンクの暖かさに絆されつつ、少し止んだら家に帰ろうと、寒い午前中を凌ぐのだった。