食べ物と私

食べます。

上手くいかずにインドカレー

どうにもやり切れない日と言うのが、数ヶ月に一度はやってくる。

何をやっても上手く行かない、やること全部が裏目に出る日だ。

 

嫌な予感がしたのは、朝、日の差さない部屋を見た時からだった。

目を細めてみると、ベランダの手すりから滴る雫が見える。

 

雨だ。完全に雨。

 

雨は私がこの世で嫌いなもののトップ3には入る。

さっそく鬱々とした気分に蝕まれつつ、アマゾンで買った2000円くらいの頑丈なカッパを身に纏い、傘を自転車に指して目的地に向かう。

 

カッパを着ていてもなお少し濡れてしまった袖口に寒さを感じつつ、自転車を降りて傘を差し、コンビニに向かう。ホットコーヒーを買おうと思ったのだ。

 

しかし、お会計を済ませたら、傘立てから私の傘が消えていた。

 

呆気にとられつつ、ぐらぐらと何かが崩れていく音がする。

これまで生きて来て傘を取られたのはこれが初めてだった。

しかも結構長い間愛用していた、柄付きの傘だ。

 

悲しいやら腹が立つやら。それでも用事を済ませてしまおうと、目的の建物に入る。

もちろん悲劇はここで終わらない。

私はそこで予定がキャンセルになったという知らせを受けるのだった。

 

雨の中外に出て、傘を盗まれて家に帰る。

そんな、こてんぱんな時間を過ごし、私は決意するのだった。

今日は楽して、しかも沢山食べてやろう、と。

 

そんなこんなで夕食時。私はスマホをいじっていた。

多少お金がかかってもいい。こんな日は出前に限るのだ。

色々な食べ物が指先ひとつで部屋まで届くUber Eatsだが、私はインドカレーを頼むことが多い。

元々ナンやカレーが好きということもあるが、単純にインドカレーのお店は量が多いのだ。

 

引っ越す前、何度か通ったカレー屋さんはナンが食べ放題であるにも関わらず、結局一枚もおかわりすることが叶わなかった。

それ以前に、出されたものを食べきるだけでいっぱいいっぱいなのだ。

 

残すのは忍びない、だからと言って無理して食べきることはしたくない。

そんなインドカレーに、自宅は丁度良いのだ。

 

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玄関に置かれていたビニール袋を開けてみると、案の定というかなんというか、一ピースしか頼んでいなかったはずのナンが二枚、ついでにサービスなのか、同じく頼んでいないトマトスープが付いてきた。

 

これがお店だったら撃沈していたところだが、今の私にとってはありがたい。

特に、この色々と不遇だった一日の締めくくりとしては最高だ。

 

大きなナンを千切り、ほうれん草のカレーに付けて、頬張る。

ぴりりと辛い、それでどこか優しいペースト状のカレーは熱く、もっちもちとしたナンがよく合っている。

コンソメの良く効いたトマトスープも内臓をカッカと温めてくれる。

 

身も心も寒い日。インドカレーは否応なしに私を温めてくれるのだ。

 

結局食べきれなかったナンにラップをしつつ、腹八分。

心地よい満足感に、今日のことが少しだけ薄れていくのだった。