夕方に目が覚める。
今日は酷く寝ていた。一度目に目覚めたのは午後1時、それから次に目覚めたのが今、夕方というかもはや夜の7時である。
こんなに眠ってしまった原因には心当たりしかないが、どうせならそこにも目を瞑ってしまうとする。
何度も寝たからか、何度も夢を見た。最後に見た夢、黒くて小さな愛犬を連れてタクシー運転手と共に旅する夢は結構面白かったと思う。
何も食べずに寝こけていたからか、寝転んだままスマホをいじるもすぐにぐるぐるとお腹の虫が鳴り始めた。
一人分の食事ならあるのだがどうしようと、同居人に電話をかける。
するとどうやらデリバリーで食事を済ませているようだったので、それならと、残っていたシチューを温め、ついでに卵を2つ、鍋に入れる。
シチューは少し残っているだけだ。おそらく物足りない。
その隙間を茹で卵で埋めてやろうという算段である。
お風呂上がり、ドライヤーをしている間に卵を茹でる。いつもなら時間を測ったりもするのだが、今日は面倒なので無視だ。
私は目玉焼きも茹で卵も基本半熟派である。
やはり卵はとろけるのが醍醐味といったイメージがある。カチカチの卵も悪くはないが、どうしても残念だなと心のどこかで思ってしまう。
しかし、茹で卵の場合は黄身の周りだけは固まっているくらいの固さが一番好みかもしれない。
半熟すぎると、今度は返って上手く食べられないのだ。
いつも卵を取り出すのは沸騰してから6分といったところだろうか。
髪を乾かし終わり、煮えたぎった鍋の湯を捨てる。
さて、何分茹でたかは覚えていない。
この卵たちはどんな顔をしているのだろう。
シチューも温めて食卓に置く。
アンバランスな晩御飯。でも眠り続けただけの今日には妥当な晩御飯なのかもしれなかった。
指の腹を使い、できるだけ優しく卵の殻を剥いていく。甘皮が見えればこちらのものだ。
一度はギャルのお姉さんみたいに、爪をガッチガチに強くしてみたいのだけれど、そうするとゆで卵を剥く時にがたがたになってしまわないか不安である。
長い爪の人たちは一体どうやって茹で卵を剥いているのだろう。使いこなせるようになると意外と簡単だったりするのだろうか。
つるん、と上手く剥けた茹で卵。
ふにふにとした触感の柔らかさから、慎重に、できるだけ大きな一口で卵を齧る。
案の定、中からはとろりとした黄身。
どうやら半熟の中の半熟、とろとろ卵が出来たらしい。
半ば飲むように卵を食べつつ、もう一つ、と手を伸ばす。
上手く食べることさえできれば半熟卵だってこちらのものなのだ。
シチューと半熟茹で卵。
起きていられなかった今日は、とろとろとしたコンビで終わっていくのだった。