私は間が悪いことが多い。
不幸体質とまでは言わないが、微妙に運がないのだ。
元同居人と出かける。
ご飯はどこでもいいと言うので、ずっと前から私が気になっていたお店のパンケーキを食べることにした。
といっても、パンケーキ専門店ではなくただのレストランなので、甘いものがそこまで好きではない元同居人の昼ごはんに値するメニューもあるだろう。
そんな考えの元、地下街、飲食店が集まった通りに出る。
しかし、何か様子がおかしい。
私が想定していたよりも飲食店の通りが短いのだ。
それに、何か見知らぬ壁があるような。
出来合いの白い壁に近づき、そこに貼ってあるポスターをよく読んでみると、リューアルオープン、の文字。
がっくりと肩を落とす。
しかもリニューアルと書いてあるくせに、次に並ぶお店の名簿の中に、そのお店の名前はなかった。
私にとって、こういうことは珍しいことではないのだ。
旅行に行った時も、名物の商店街が臨時休業だったり、行こうとしていた喫茶店が営業時間を変更してしまっていたり。
何だかんだ上手くいかない。
それも、気合を入れれば入れるほど。
仕方なく、近くのフードコートに足を運んだ。
パンケーキ用に朝から開けていた胃は空っぽできゅるきゅる痛くなってくるし、パンケーキ用に準備してした口の中は突然の出来事に戸惑って、何が食べたいかハッキリさせてくれない。
けれど、多分、欲しているのは甘いものだろう。
フードコートをひとしきり見た後に、ピンク色の看板へ足を運ぶ。
目指すはサーティーワン。パンケーキが二つのアイスになった。
メニューを見ようとしたが、楽しそうな女子高生が群がっていたため撤退。
必死でディスプレイを見て、ジャモカコーヒーとポッピンドリームを注文した。我ながらよく決断できたと思う。
こういう時に考えてしまうのは推し達についてなのだが、二人の推しの好きそうな味二つにしようかと思ったところ、どうしても自我が出てしまった。
結果、最推しの味をポッピンドリームに変更、推しの好物のコーヒーはそのままという妥協案に出た。
ねっとりとしたアイスをピンクのスプーンで掬う。
ジャモカコーヒーは思ったよりコーヒーの味が強く、それでいてスッキリしている。
ポッピンドリームは、パチパチと弾ける楽しい味だ。
食べ進めているうちに、どこか満たされていく心。
どうやら胃も口も、もうパンケーキのことなど忘れてしまったらしい。
間が悪く、色々と思い通りにいかないおかげで、順応力だけは上がっているのだ。
結局満ち足りた気持ちで最後の一口までしっかりとアイスを味わい、それはそうとしてまた今度、別のパンケーキを食べに行こうと頑なに誓うのだった。