食べ物と私

食べます。

帰省、よなよな新幹線

少しの間、実家に帰る。

何だか随分と久々の帰省だ。


適当に買い漁ったお土産をほぼ空っぽのキャリーケースに詰め込んだ。

中には食べ切れなかったキャベツが四分の三玉、入っている。きっと母なら何とかしてくれるだろう。


帰省はいつも、楽しみと面倒が半々だ。

何だかんだ、私が帰ると家族は喜んでくれる。と、少なくとも私は感じている。悪いものじゃない。


けれど、やはり生粋の一人好きな私は、誰かのいる日々をちょっと窮屈に感じたりするのだ。

それに、両親にとって私はいつまでも子ども。

こちらが見たくない色々なことを心配してくれたり、素直に伝えてきたりするのだ。


一人暮らしをしているから上手くいく距離だってある。

少なくとも私はそうだから。


新幹線の時間を確認して指定席の列に並ぶ。

この切符は父が送ってきてくれたものである。

父は私が帰省すると聞くと、いつも指定席の切符を送ってくれる。


贅沢なことだとは分かっている。

けれど、父が帰省の切符を送ってくれなかったら、帰省のお金を自腹で出せと言われていたら、きっと私は実家に全く帰らなかっただろう。

もしかしたら父もまた、そんな私の性を分かっているのかもしれない。


わざわざ駅のホームまで見送ってくれた元同居人に手を振りつつ、新幹線、一番前の窓側の席に座る。

幸いなことに隣には誰もいないようだった。


あまり人に見られないよう、そそくさとリュックから冷たい缶を取り出す。

今日は帰省する度に憧れていた、あることをしようと思う。


プルタブをひねると、カシュっと音がして思いの外泡が噴き出してきた。ちょっと焦る。


そう。ずっとやりたかった事は、新幹線の中での飲酒。

 

f:id:zenryoku_shohi:20220310122545j:image


このために買ったちょっと豪華な発泡酒をグビ、と一口。

正直胃が空っぽだったから、あまり褒められた行為ではないと思う。

しかし、このスッキリとした苦さを嬉しく感じる心と身体がいた。

ついでに脳だって、アルコールで浮かせてしまう。


まだ日は高い。

なぜ飲酒に踏み切ったかというと、今夜起こる面倒ごとを乗り切るためだ。


私が実家に帰っていない間、実家では色々なことがあったらしい。

私の方でも色々あったが、それを合わせて聞いたり、聞かれたりするのだろう。


半分閉めたカーテンから、流れていく風景を見る。

実感はないが、どんどん、刻一刻と私は実家に近づいているのだ。


250円弱の発泡酒を飲みながら、AirPodsで音楽を聴く。

恵まれているのだろう。私はきっと。