これは数日前の話。
昼から飲もうと言ってきたのは妹だった。
仕方なしとそれまでにどうにかやることを終わらせて、午後5時にはもう食べられる準備を整えておく。
食卓についているのは私、母、妹、そして妹の彼氏だった。
妹の彼氏と会うのは初めてではないが、私とその彼氏は初対面だった。
緊張しているのかと思いきやそうでもなく、随分とリラックスした様子で我が家にいる。
母に聞く限りではもう何度か家に来ているらしく、すっかり母とも仲良くなっているのだった。
買ってきた酒類をテーブルに広げれば、母が細々とした料理を持ってくる。
まるでどこかの料理店のようだった。もしくは、田舎の親戚の集まりのような。
不思議な面子もお酒が入れば段々と違和感は無くなってくる。
初めに彼氏が来ると知った時はどうしようかと思ったが、アルコールとは偉大なものだ。
エビチリに鳥の南蛮漬け、生春巻きにトマトのサラダ。
パクパクと食べ進めながらグラスを傾ける。
どんな時でも美味しいものは美味しい。
妹の彼氏はこれで何人目なのだろう。
私と違って妹はモテる。
やり取りもうまく、とっつきやすいからだろう。
距離感の近い2人を眺めつつ、何だか懐かしいような、慈しむような気持ちになる。
この彼氏に私がもう一度会うことはあるのだろうか。
グラスも随分空いた頃、母の携帯に父から電話がかかってくる。
今回、単身赴任中の父には直接会わなかった。だから現在もこんな感じでのけ者なのだ。
父はどうやら私とも離したいらしかったため、一度グラスやおつまみ、そして妹と彼氏を撤退させ、私と母だけがビデオ電話に参加する。
いい塩梅にふわふわと酔っ払った頭のまま、ビデオ電話に映る。
父は何だか厳格な雰囲気を作りたいらしく、そんな努力が滑稽だった。
歳をとると話が長くなるようだが、まとめると父はどうやら私の就活に期待しているらしい。
何だか酒の席なのにどっと疲れてしまい、ビデオ電話を切った後、色んなものを呼び戻し、初対面の人がいることすら忘れてグラスを空ける。
嫌なことを忘れさせてくれるのもまたアルコールのいい所だ。
とはいえ、たとえ家族でも私は人前で理性を完全に飛ばすことができない。
延々と程々に酔っ払ったまま、酩酊までは行かずにその場はお開きとなってしまう。
少し嫌な記憶は残ったまま、なんの酒かもわからない透明な液体を飲み干した。
こういう時ばかりは少量で酔うことが出来る人が羨ましく感じてしまう。
それでも多少だるい体をベッドに横たえながら、料理ももう少し味わえばよかったなと、ひっそり後悔するのだった。