とある事情で人の金、元同居人の金を使い、飲み放題を頼んでいる。
今日は誕生日の前日なのだ。
集合は昼過ぎだったはず。
やることが長引いたとか何とかで、約束に一時間と三十分遅れられたが、それでもアルコールは気分を向上させてくれるのですごいと思う。
元同居人が約束に遅れることは珍しくない。
もう慣れた、と言いたい所だが、年々遅れた後の謝罪が軽くなっているような気がして、少し気に食わない。
もんもんとする部分はあるが、ともかく今日は酒である。
足を運んだのは焼き鳥屋さん。
どうやら予約してくれていたらしい。
コース料理はいつも食べ切れるか心配だが、こういう日は少し嬉しい。
半個室、靴を脱いで入る座敷の部屋。
ガヤガヤとうるさい居酒屋はなんだか久しぶりだった。
声を少し張りつつ、タブレットで生ビールを注文。
焼き鳥というラインナップを合わせて考えても、今回の優勝はこの生ビールだろう。
元同居人も同じように生ビールを注文する。
食べ物に一番合うお酒は、ビールとハイボールだと思っている。
やはり甘くないお酒というのは私の中で大前提ではあるのだが、二つともとにかく飲みやすいのだ。
ただ、難点が一つあるとすれば、二つとも炭酸ですぐにお腹が膨れてしまうということだ。
タブレットでビール以外のお酒を眺めながら、前菜、サラダと食べ進めていく。
ハイボールよりもビールの気分だったため、今日はハイボールはなし。
鶏肉ということもあり、ビール以外で頼むなら赤ワインもいいかもしれない。
そんなことを考つつ、生の二杯目を注文し終えた後、やってくる焼き鳥たち。
どこの部位かは分からないが、塩味のそれはなんだかめちゃめちゃに美味しい。
そしてビールが進む。
そんな中、おもむろに元同居人がタブレットに手を伸ばし、あるものを注文。
なんと、生のピッチャーだった。
私は未だかつてピッチャーなんて、水かお茶でしか頼んだことがない。
生のピッチャーの存在すら知らなかった。
驚く私に元同居人は「どうせ飲むでしょ?」と言って早速自分のグラスにビールを注ぎ入れていた。
私はといえばその大きさに呆気に取られ、どうせ飲み放題なんだから一杯ずつ頼めばいいのに、とか、決断力すごいなぁとかもにょもにょ思いながら、結局まぁいっか、とグラスを傾けた。
こんなでっかい生ビールの存在を知ることができたし、何より飲むのは事実だ。今日はそのつもりで来たのだから。
まだ料理も中盤。
私はいい気分になりながら、既に少し減ったピッチャーから生ビールを注ぐのだった。