人の輪は嫌いじゃないんだと思う。
小さい頃から多分コミュニケーションは苦手じゃなかった。
理不尽な目にはあったこともあるが、全員が敵になるような状況に陥ったことはないし、親密度はどうであれ大体の人とは話すことが出来た。
同窓会だって高校のものには参加した。
飲み会もそれなりに楽しいとは思う。
決して、人との関わりを毛嫌いしているわけではない。
けれど、その中でふと我に返り、呼吸が苦しくなる時はある。
ちょっと今日は選択を間違えた。
本当は一人の場所にこもろうと思っていたのに、談笑の楽しさに流されてしまい、人が多い空間へ足を運んでしまった。
話が矛盾することなんて、よくあることだ。
あっちとこっちで顔を使い分けることだって、私達はよくやっている。
しかし、今日はその差がちょっと気持ち悪かった。
よくない人伝の話がどんどんと広まっていく。
話を広めるのも違うけど、止めたって感じが悪い。
ぐるぐる、ぐるぐると。つくづく嫌な感じである。
帰る時にはなんだか疲れ切っていて、たった一度の選択と、口を動かしたあの時間をただ後悔するのだ。
あの時はあんなに笑っていたのに。
じゃあ、あれが嘘かと言われたらそうでもない。
全部本当で、全部嘘だ。
あっちではこう思って、そっちではこう思う。
私は一人なのに、何度もそんなことを繰り返す。毎日、毎日。
腹立たしい。疲れてしまう。
早く分裂してみたいと、心のどこかでそう思った。
コンビニで買った鳥の炭火焼を温める。
冷蔵庫から出した角ハイ。これもあまり好きじゃないはずの人からもらったものだ。
ぐいぐいとお酒を流し込みながら、付属の柚子胡椒をたっぷりつけて鶏肉を口に運ぶ。
ほろ苦い炭の風味と、しっかりとした鶏の味。
塩っ辛い柚子胡椒がさらにアルコールを促してくる。
あらゆる意味で希望を諦めていない人が、意外に多いのだと思う。
簡略化した自分だけを追いかけることの出来る人が、きっと大半なのだ。
馬鹿にしているわけじゃない。私に無駄な思考が多すぎるという話だ。
生産性があるわけでもない。どこかに答えや出口があるわけでもない。
自らの首を絞めるだけ。殺すことも出来ないくせに。
でも、もうこれは仕方ないことなのだ。
こういう風に生まれてしまったのか、はたまた出来上がってしまったのか。
それは分からないが、私は私を降りることが出来ない。
私が完璧に諦めているかと言われればそうでもない。
でも、多分、そこらの人よりは自分を軽蔑しているし、ずっとずっと諦めている。
ぐちゃぐちゃになったまま、私の内側は永遠に整理されないけれど、一時アルコールで覆い隠すことは出来る。
そうやって私は、今日も私から逃げ延びて、生き延びていくのだろう。