食べ物と私

食べます。

別れた後のフレンチトースト

元同居人と別れた。

約5年の付き合いだっただろうか。

私としては大往生である。

 

電話がかかってきたのは午後。

どうやら心が固まったとのことだった。

 

思い出を語る元同居人は多分泣いていたが、私は別に悲しくなかった。

もしかしたらちょっと寂しいのかもしれないな、と思っただけ。

それだけだから、別に泣いたりもしなかった。

どちらかというと、軽くなったという方がしっくりくる気がする。

 

だってずっと前から、きっと心は決まっていた。

ここにも綴ってきたように、多分随分と前から私は諦めていたのだろう。

 

元同居人を責めたり、怒ったり、寄り添ったり。

そういう時間は、私の中ではもう終わったことなのだ。

そこに、契約終了という文字が加わる。

それが重いことなのか軽いことなのかは分からないが、私にとって自然なことではあった。

 

二時間に及ぶ電話の後、自分のお腹に目を向ける。

独り身となった私が最初にするのは、フレンチトースト作りだった。

 

少し賞味期限の切れたパンを半分に切り、卵液に浸す。

パサパサのパンはすぐに卵液を吸収してしまった。

そのパンの間にどうにかこうにかハムとチーズを挟み込み、フライパンで焼く。

少しハチミツをかければ、立派なご飯のフレンチトースト。

 

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スプーンでどうにか切り分けて一口。

ハムがたっぷり、チーズもとろけていて美味しい。

甘じょっぱさが堪らないのだ。

 

昼ごはんにしても遅い時間に口を動かしながら、一人で考える。

 

これからは一人でバーにだって行けるし、飲み会にいちいち嫌な顔をされることもない。

私がやりたければマッチングアプリを入れてもいいし、休日だって完全に自由に行動できてしまう。

何かを相談して渋い顔をされることもなければ、ラインの返信だって無理してしなくていい。

明るすぎる思考回路を理解するための苦痛だって味わなくていいし、気持ちを汲んであげる必要も、寄り添わなければいけない義務もない。

 

そう考えると、少しだけ嬉しくもあったりした。

私は薄情者だろうか。

 

とはいえ、すぐに新しい人を作る気は毛頭ない。

というか他者と価値観をすり合わせるのはもう懲り懲りなのだ。

しばらくは一人、自由気ままにやりたいと思っている。

 

はてさて。そう考えた時思い立ったやりたいことと言えば、一人で旅行に行ってみることなのだが、腰の重さ的にちょっとそれは難易度が高いかもしれない。

 

とりあえず、近くの飲み屋さんにでも入ってみようかな、なんて。

 

私の人生の中で初めて出来た「元カレ」という存在に妙な達成感を抱きながらフレンチトーストを食べ終え、私はのこのことベッドに戻るのだった。