人通りが多い道。
どこからか聞こえる祭囃子の中、二人で歩く。
連絡が来たのは昨日のことだった。
近くまでくるから会おうと、友人Iと再会を果たした。
二人ともとりあえず腹ペコだったので、数ある店の中から安定安心のやよい軒を選んでお持ち帰りで選択。
スーパーにも寄ってお酒とおつまみを買い込んで、いざ、宴会の開始である。
久々に掃除機をかけた部屋で買ってきたものを広げる。
友人iは生姜焼き定食、私はカツ丼だ。
カツ丼なんてお店でしか食べないし、それも滅多に選ばないから随分久しぶりだ。
ちょっと甘いタレにご飯とカツが浸かっている。卵もひたひた、出汁が美味しい。
やよい軒のお漬物が大好きなので、横に乗っかっていて少し嬉しくなった。
私はビール、友人Iはレッドブルとストゼロを混ぜたものを嗜みながら、色々なことを話す。
現実の話はちょっと病むのでいい具合にファンタジーの話を挟みながら。
ファンタジーについてはちょっとここでは憚られるような話がほとんどだった。
そして戻ってくるのは愛についての話。
認められたかったり、愛されたかったり。
「宝物になりたい」と、友人iは言った。
大事に大事にされたいと。でもその大事にされる方法も妥協出来ないのだと。
宝物。宝物。
ちょっと考えてみる。
毎日綺麗に整えられて、その人が不在の時は大事にカギ付きの金庫に仕舞われる。
でもその人の頭の中のどこかをいつだって占領していて、いつでも思われている。
その人が帰ってきたらまた日の目を浴びて、大事に大事に抱えられるのだ。
無機物としてならそれでもいいのかもしれない。
何も出来ないから、全部やってもらう。
そうするうちに私も相手を好きになる。
多分、それで成立する関係だ。
けど厄介なことに、私には中途半端に感情がある。
本当に本当に厄介なことに。
宝物のように扱われたいけど、してもらうばかりじゃ居心地が悪くて、返さなきゃいけないような気持ちになって、それがちょっとつらくて。
とどのつまり、私は宝物になりたいし宝物が欲しいけど、私は宝物を大切に出来ないのだ。
なんだか悲しくなってしまう。
多分、私が人生で一番望んでいるこの愛は、一生手に入らないものなのだ。
もしかしたら愛されることが何なのか、愛することが何なのか、私はまだよく分からないのかもしれない。
愛し愛されたい。ただそれだけのことがはちゃめちゃに難しい。
もうどうしようもないなと笑いながら、私達はアルコールを傾ける。
こうやって生きていくしか、きっと道はないのだから。