明るいうちに、9%のアルコールを引っ提げて帰ってくる。
本当は色々な業務を終わらせて帰ろうと思っていたが、気分が上がらなかった。
こういう日は保てなくなる前に家に帰ってしまうのが吉だろう。
明日も早いから、という理由でさっさと風呂に入ってアルコールを流し込む。
ポテトチップスを一緒に食べてしまった。壊したい気分だった。
ピリピリしていた。
怖い場所だったように思う。なんだか全員が怒っていたような。
空気に充てられて、疲れてしまう。たった2時間が乗り切れない。
早く帰りたい、帰りたいと願いながら、スマホのキーホルダーを睨むように眺めていた。
多分、空気なんかに傷ついていたら、みんなみんな生きていけないのだと思う。
今日も泣いていた、あの子のように。
だから大きな顔をして後ろに座る人たちは、もう何もかも忘れてしまったのだ。
身を護るために忘却は大事なことだと思う。
今よりもう数十年生き延びたら、私もそうやって感じなくなっていくのだろうか。
でも、感じなくなったとして、私が生きている意味はあるのだろうか。
いよわさんの楽曲、『きゅうくらりん』。
ズレた音程が、何となく昔家の周りをよく走っていた車販売のパン屋さんを思い起こさせた。
なんだか苦しくなってしまった。
私も実況で見たことがあるゲームの女の子をイメージした曲と知って、余計に悲しくなる。
歩くのがずっと上手くない。
色んなことに乗り遅れて、ただゆっくり息をしていたいだけなのに。
何でこんなにもそれが難しいのだろう。
そんなことを想っていると、また、泣いてしまった。
こういう夜を超えるのはちょっと難しい。
知識として、こういう時に空腹と冷たさは駄目だと知っていた。
落ち着いたところで卵を二つ、牛乳、砂糖。チーズを入れながら、焼いていく。
中をトロトロにしようとしたら、ちょっと失敗。溢れてしまう。
私のオムレツ。
インスタントのミネストローネも作る。
スプーンで割ってみれば、中からとろりとチーズが伸びる。
温かくてトロトロで、甘くてしょっぱい。
崩れたオムレツを食べながら、また泣けてくる。
ああ。こうやってきっと明日も私は生きられる、生きられてしまう。
独りでも案外大丈夫だってこと、というより、誰かがいてもずっと独りだってことは、もうずっと突きつけられた事実で。
でもたまにその事実が、どうしようもなく哀しくなってしまう。
寂しいままだ。みんな、みんな。
それでも、ちょっとの休憩のつもりで一通のメールを送る。
これで明日は、眠りにつく。
少しの罪悪感も感じない自分に嫌悪感を覚えながら、それでも私は目を閉じた。